パナソニックIPマネジメント株式会社のドラム式洗濯乾燥機Cuble キューブル」に関する特許です。

 AC7C1282-1E71-43B2-8B91-C76D3D639785

ドアの天面にはタッチパネルを備えています。

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いずれも商品ページより引用。

パナソニックさんがこだわった、ドラム式洗濯乾燥機のデザイン、これが今回の特許のポイントです。

本来、デザインは意匠権等で保護されるものですが、このデザイン性に機能面で特徴を持たせ、なんとか特許権としようとしたのが今回のケースです。

ちなみに特許権者のパナソニックIPマネジメント株式会社とは、パナソニックグループの知財業務を集約している会社です。

特許出願2015-175296

図1

 1EE2A7AE-2A0D-49FC-935D-37CE157F3707

図2

 4A51D335-B3B3-4CED-8CB0-E9FE6F601565

普通のドラム式の場合、丸い開口部に丸い蓋がついています。

このCubleシリーズのデザインは、透明な蓋が本体の上方全面を覆っているところが特徴です。

請求項1は以下のとおりでした。

前方に開口部を有する本体と、前記開口部を開閉自在に覆う蓋体とを備え、

前記蓋体は、前記本体の横幅寸法と略同じ横幅寸法に形成した略四角形状に形成し、

前記蓋体の前面をフラットな形状に形成した窓カバーにより構成したドラム式洗濯機。

蓋体がフラットで透明な窓カバーとなっており、本体と同じ横寸法になっていることで、デザイン性が高くなっています。

これに対し、審査官(審査第二部生活機器 山内康明さん)は、引用文献1のサムスンさんの技術から容易に想到できるとして進歩性がないとバッサリ。

ただどうもサムスンさんの技術と相違点がなさそうなため、もしかしたら新規性がないのかもしれません。

引用文献1 

図1

 B68EEA56-91E8-49EA-AABA-3B7969E711DA

パナソニックさんの蓋体と同じように見えます。

引用文献1の米国特許出願公開第2008/0223085号公開公報はこちらから。

そこでパナソニックさんは請求項1を補正します。

商品ページの写真のように、蓋体の上面に操作表示部を配置することを特定しました。

これにより本体に操作表示部を設けなくて済む→水槽を上方へ配置できる→洗濯物が出し入れしやすい、という効果を主張するため、水槽と回転ドラムも特定しました。

補正後の請求項1は以下のとおり。

前方に開口部を有する本体と、前記本体内に配設される水槽と、前記水槽内に配設される回転ドラムと、

前記開口部を開閉自在に覆う蓋体とを備え、

前記蓋体は、前記本体の横幅寸法と略同じ横幅寸法に形成し、上面を前記本体の上面と略同一面に形成した略四角形状に形成して前記上面に操作表示部を配置し、前記蓋体の前面をフラットな形状に形成した窓カバーにより構成したドラム式洗濯機。

これに対し、山内審査官は再度の拒絶理由を通知します。

進歩性です。

あらたにリンナイさんの食器洗浄機の引用文献2を引用します。

引用文献2

図1

 06C5334C-DDAB-4D3B-ACF9-EA18BE16D1CD

図2

 8D106FBE-A907-432D-8879-00AEAEBC53BA

図3

 F1E8ECE5-3E22-4AAE-8D9C-B704C2FE8DFB

これは蓋体に上面操作表示部25があるので、これを引用文献1のサムスンさんの洗濯機の蓋体にも用いることは容易でしょということです。

引用文献2の特開2015-123203号の公開公報はこちら

そこでパナソニックさんは再度補正します。

サムスンさんの蓋体は上面が露出していないため、そこを差別化するように特定しました。

上面が露出しているからこそ、上面に操作表示部を設けるんでしょと。

2回目の補正後の請求項1は以下のとおり。

前方に開口部を有する本体と、前記本体内に配設される水槽と、前記水槽内に配設される回転ドラムと、前記開口部を開閉自在に覆う蓋体とを備え、

前記蓋体は、略四角形状に形成され、閉塞状態で前記本体前面を覆って、前記蓋体側面が前記本体側面側に露出するとともに、前記蓋体上面が前記本体上面側に露出し、前記上面に操作表示部を配置し、前記蓋体の前面をフラットな形状に形成した窓カバーにより構成したドラム式洗濯機。

これに対し、山内審査官は3回目の拒絶理由を通知しました。

新規事項の追加と明確性です。

まず新規事項の追加とは、補正において新たな技術事項を導入してはいけないというルールです。

特許は早いもの勝ちなので、あとから新しい技術を入れて補正できてしまうと、出願後に発明した技術を審査過程で入れることができてしまいます。

これでは早い者勝ちが成り立たないので、新しい技術事項は入れないように補正する必要があります。

パナソニックさんの2回目の補正では、実は「蓋体は、前記本体の横幅寸法と略同じ横幅寸法に形成」という文言が削除されていました

この文言を削除することで、「略同じ横幅寸法に形成」されていない蓋体という、新たな技術事項が導入されているという拒絶理由です。

次に明確性ですが、こちらは「操作表示部」って何?ということ。

入力手段があるのかどうか明確でないという拒絶理由です。

そこでパナソニックさんは3回目の補正をします。

削除した文言を戻し、操作表示部に入力手段が含まれることを明確にしました。

この点を発明のポイントに直したことで特許となり20191211日に登録公報が発行されました。

特許となった請求項以下のようになってます。

前方に開口部を有する本体と、前記本体内に配設される水槽と、前記水槽内に配設される回転ドラムと、前記開口部を開閉自在に覆う蓋体とを備え、

前記蓋体は、前記本体の横幅寸法と略同じ横幅寸法に形成し、略四角形状に形成され、閉塞状態で前記本体前面を覆って、前記蓋体側面が前記本体側面側に露出するとともに、前記蓋体上面が前記本体上面側に露出し、前記上面に入力手段および表示手段を有する操作表示部を配置し、前記蓋体の前面をフラットな形状に形成した窓カバーにより構成したドラム式洗濯機。

最初の拒絶理由から特許となるまで、1年5ヶ月もかかる大仕事でした。

山内さん、パナソニックさん代理人弁理士さん皆さんお疲れさまでした。

特許第6617278号の特許公報はこちらから。

拒絶理由や意見書等はこちらの「経過情報」から。