合同会社ユー・エス・ジェイの「ミニオン」に関する特許です。
ホームページより引用。
USJの紹介動画はこちら。
合同会社ユー・エス・ジェイさんは、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営会社です。
USJにはミニオン・パークがあり、このミニオンの表情を決めるのは印象的な目玉です。
今回の特許のポイントは、この目玉にリアリティと表現力を与える点です。
特許出願2018-213840
図1
図4
図4の32L、32Rが目玉の動画が投影されるスクリーンです。
その周囲の30L、30Rが遮蔽カバーで余計な光の入射を防ぎます。
図6
この左目部分を拡大したのが図6で、プロジェクタ29からの動画がスクリーン32Lに投影されています。
スクリーン32Lは透光性を有しているため、正面から見たときに投影された目玉が動いているが図9のように見えるというわけです。
図9
請求項1は以下のとおりでした。
「目を有する生命体を模した構造体であって、
筐体と、
当該生命体の目に該当する前記筐体の部位に設けられ、透光性を有する透光板と、
前記筐体内部から前記透光板に対して動きのある目玉の画像を投影する投影部と、
を備えた目を有する生命体を模した構造体。」
この請求項1に対し、審査官(審査第一部自然資源 西村民男さん)は東芝さんの引用文献1の技術から容易に思いつくでしょとバッサリ進歩性を否定しました。
引用文献1
図1
図3
図9
東芝さんの技術では電子的表情表示部11に透光性を有する照射スクリーン86が設けられています。
内部からランプ82によって照射スクリーン86に対して表情を変更するリアルな画像を照射するので、ほとんどUSJさんの技術と同じです。
いろいろな表情を表示するものですから、「動きのある目玉の画像」を表示するのも容易でしょうという判断です。
引用文献1の特開2001-215940号の公開公報はこちら。
ちなみにこの文献はこちらの特許でも引用されていました。
これに対しUSJさんは請求項1を補正しました。
目玉なので投光板が2つあり、そのそれぞれに遮光カバーがあることを特定しました。
これでそれぞれの目玉の画像が鮮明に見えるようになります。
意見書を引用します。
USJさんの技術のポイントについてです。
「その特徴とするところは、「目玉の画像を投影するため、2つの透光板のそれぞれに、前記投影部に向けた方向に延長するように筒状の遮光カバーを設けた」点にある。かかる構成を採用することにより、「2つの透光板のそれぞれに独立して筒状の遮光カバーを設けているので、透光板に対して後方からの外乱光の侵入を防いで、より鮮明に目玉の画像を表示することができる」という効果を得ている。」
この主張が認められたようで特許となり、2021年10月6日に特許公報が発行されました。
特許となった請求項1は下線部を修正した以下のとおりです。
「目を有する生命体を模した構造体であって、
筐体と、
当該生命体の目に該当する前記筐体の部位に設けられ、透光性を有する2つの透光板と、
前記筐体内部から前記透光板に対して動きのある目玉の画像を投影する投影部と、
前記2つの透光板のそれぞれに、前記投影部に向けた方向に延長するよう設けられた筒状の遮光カバーと、
を備えた目を有する生命体を模した構造体。」
特許第6944921号の特許公報はこちらから。
拒絶理由通知書や意見書等の情報はこちらの「経過情報」から。
なお下位の請求項については明確性とサポート要件の違反が通知されていました。
そちらに興味のある方は経過情報を見てみてください。